苦難をも誇りとします 618

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参照引用


心を癒やす言葉の花束  アルフォンス・デーケン



そればかりでなく、苦難をも誇りとします。
わたしたちは知っているのです、
苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生むということを。
         新約聖書『ローマの信徒への手紙』五章三~四節




苦しみは、人格的な成熟への大きなきっかけとなります。
苦しみを体験することによって、以前には思いも及ばなかった人生の複雑な側面に気づき、より豊かな人間に成長できるのです。


パウロは、ローマの信徒への手紙の中で、苦しみを通じてより高く広い境地に到達できることを説いています。


パウロ自身、伝道の旅の途中、飢えや渇き、寒さに凍える肉体
的な苦しみと共に、人間関係における葛藤や激しい迫害を受け、ローマで殉教しました。


しかし、どんな絶望的な状況にあっても、神を信じ、苦しみを耐え忍んだ先の希望を見失うことはなかったのです。


人類の歴史において、苦しい体験を通じて、著しい自己変革を遂げた人はたくさんいます。


私の母国、ドイツでいえば、ルートヴィヒ・ヴアン・ベートーヴェンです。
ベートーヴェンは、音楽家にとって生命線とも言うべき耳に病を抱えていました。

三十二歳のときには自死を考えるほどに追いつめられながらも、死の誘惑に耐えています。

彼の死後、遺書が見つかっていますが、それによると、聴覚の異常はすでにニ十六、七歳ごろから始まっていたようです。



その後も難聴は進行し、晩年の約十年は、ほぽ聞こえない状態にまで陥り、音と絶縁された世界で生きることを余儀なくされました。

加えて持病の腹痛や下痢の苦しみ、後継者として溺愛していた甥の問題行動や裁判沙汰にも巻き込まれていたのです。



そんな苦しみの極みにいながらも、自暴自棄に陥ることはなく、「荘厳ミサ(ミサ・ソレムニス」など、数々の珠玉の作品を生み出しました。

中でも「第九交響曲」は、「苦悩を突き抜けて歓喜へ」という
シラーが書いた歌詞の通りヽ試練の苦しみを通して神の栄光を讃える
ベートーヴェンの揺るがざる信念の結晶と言えましょう。



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